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転生者を匿ったら指名手配犯になりました 読みました

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転生者を匿ったら指名手配犯になりました 読みました

タイトル: 転生者を匿ったら指名手配犯になりました

作者: 壱足壱 葉弐

ジャンル長編 現代ファンタジー

掲載アドレス: https://kakuyomu.jp/works/16816452219385236888(カクヨム掲載)

 

あらすじ

転生者は人を殺す。それが世間の一般常識だった。
他の人間と同じようにその常識を信じていた紘彰は、突然現れた転生者に「遺書を書かせてくれ」と願う。
けれど、返ってきた言葉は予想だにしていないもの。
本当に転生者は人を殺すのか。殺すならなぜ殺すのか。
その理由を知るために紘彰は転生者を匿うことに決めたのだった。(カクヨムの紹介文より引用)

 こちらの批評は作者さんに確認し、21話目まで読み込んだ上で書かせていただきました。

■文章・世界観について

丁重に、世界観を説明しようとしているところなど含めて、好感の持てる安定さのある文章だと思います。

一人称であるため、主人公の視線を通して、この世界を知っていく、というので読み手は知らないことを主人公、ヒロインを通して知ることになるのですが、丁重に書かれているので理解しやすい。そしてこのお話のテーマである転生者についての疑問も文章のところどころに含まれているため、「ただの転生ものと少し違う、なにかある」という期待を寄せやすいと思います。

 

独特な用語や歴史、都市についてもよく設定をされていると思います。現代なのに少し違う、ということで読み手は想像力を刺激され、読むのにわくわくとした気持ちになりやすい。

また転生チートものが流行っているネット小説の「流行りとは少し捻ったところで勝負しよう」というチャレンジ精神も読み取れました。とても面白い試みだと思います。

 

■気になった点

設定はとても面白いし、読ませてくれる。ただ、その分、小さなところで「ん?」と思うところがありました。

1話目で主人公は家に帰るといいますが、交通機関がストップしているのに、どうやって帰るつもりだったんだろう。とか、怖いものといいながらも避難する必要があるのにかなり呑気さな対応じゃないのかというやりとり。(それは5話目までのところまで読むと少しずつ違和感として覚えます)

あとヒロインの描写ですが、もう少し丁寧に書いてあげたほうが読み手はヒロインに好意を持ちやすいかと思います。

現代ファンタジーということで周りの風景に対する描写を省いているように思いました。もう少しだけ欲しいところです。
周りの建物といったものの風景描写、主人公の心理面の描写をいれてみるとさらに読み手が興味をそそられるかな、と思います。

 

■各エピソードで気になったところをまとめました

・1~5話まで

世界観の説明からヒロインであり、再転生者と会う主人公。主に世界観の説明に心を砕かれていると思います。

ヒロインとの出会いのシーンなど、怖いし、どきどきするところなどシーンとして鬼気迫るところも含めてよかったと思います。そのあとのカップ麺を食べるところなどでほのぼのしている。とくにカップ麺でジャグリングしているところは可愛さがありました。

話の進みにたいして、話の展開がやや遅いというところが気になります。

ヒロインとの出会いよりも、この世界の説明に文字数を費やしてしまっているところが見られます。

とくに1話目で地の文(冒頭)での再転生者についての説明、そのあと主人公たちの会話での世界観のひきずりはうまいのですが、どちらかというと、説明が丁重すぎてくどさを覚えます。いっそ、はじめの再転生者の地の説明を省くほうが読み手としては期待を持ちながら、唐突な主人公の理不尽な様子にあっといわせられるかと思います。

転生音や転生者予報といった独特な世界観を味合わせる言葉など魅力的ですが、それをいちいち説明すると同じくくどく感じます。

読み手への親切さを感じますが、そうした説明はヒロインと主人公が説明するシーンでも十分できます。むしろ、そこで読み手はヒロインと同じ立場で主人公の説明を聞き、理解することでヒロインと同調する(ヒロインに感情を入りやすくなります)などの効果が狙えるかと思います。

謎の単語をぱっと出すと不親切かも、と不安があるかもしれませんが、問答無用で読み手の背中を叩き込んで味合わせる手法を使っても、この世界は十分に面白いと思います。

あと気になるのが主人公の感情が少し読み辛い。とくにヒロインをあまり葛藤さを感じずに受け入れてしまっているように覚えます。せっかく1話目で、さらに一人称で鬼気迫る演出のあと、少し肩透かしです。もう少し主人公の感情を出すことで、読み手の同調を狙ってみてもいいかと思います。

 

気になったのは【転生した人が再度こっちに戻ってきた】と全員が認識しているのに5話目で「やつらはこの世界の常識を知らないんだよ。人前で能力と思われるものを使用したらすぐに通報されることをやつらは知らない(5話目から引用)」というエイリアンを相手にしているような台詞です。

前提を踏まえるなら【この世界の常識を知っている・その上でどのような状況下において能力を使用するか(転生時に正直不安定さからか、または性格の変貌か、世界移動による何かしらの精神・肉体の変化が見られる)】において状況判断、作戦行動をとるはずです。またその転生した人物の【転生期間(一ヶ月だけ向こうにいき戻ってきた、一年、二年、十年単位)】においてのこちらの常識の欠落によっても対応は違うかと思いますが、それはさすがに判断は難しいでしょうが、危険度においてある程度は判断できるのではないかと作品を読んで推測しました(危険度が高い=異世界にいた期間も長く、能力の取得が予想され・常識の欠落も期待できるため、こちら側の誘導(挑発)にのりやすい)。

せっかく転生庁本部という魅力的な対応班がいるのに、上の台詞などを口にしてしまうと、再転生者へという設定が少し可笑しく感じます。

 

■6話目~10話目

ここから作品の語りが三人称となっています。

ヒロインと老人のやりとりで【この世界の違和感】を読み手に与えるための非常に重要なやりとりが流れてきます。その重要性に対してどこかほのぼのとして気持ちが柔らかく老人とヒロインの会話など含めて、優しい雰囲気を与えきます。

ここではコーヒーが苦手というヒロインに「人間性」を感じられるところで非常に大切なところだと思います。

ただ唐突に主人公の一人称から三人称に変わった、というのは読み手が驚きます。視線の変化に耐えれない人はここで読むのを辞める可能性はあります。

ここのシーンをどうして三人称にする必要があったのかを改めて書き手は考える必要はあるかと思います。ここで主人公も一緒についていくことでヒロインとの接する、世界の違和感にも一緒に気がつくことができたのではないでしょうか。そうしたくない理由があるとして、それは作品の伏線となるのか、私はそれらに注目させていただきました。

ただ出来る限り一つの作品では語りを変更はすすめられません。

理由は

・視線が変わることで読み手が混乱し、作品から離れやすくなる

・主人公がそのとき何をしていたのかわからないため、突き放される感覚を覚える

・一人称が語る必要性がなくなってしまう

一人称では語りきれないシーンを時として【私がいない間、こういうことがあったとのちに聞いた】などの前振りでいれて変更するなどはプロの作品でもあります。(私もそういう書き方をしたことはあります。一人称ってなかなかに大変なんですよね!)
ただそうするのは、別行動をとっていた、主人公がどうしてもいられなかったなどの理由があります。不用意に変えずることは極力避けるとよいかと思います。

 

■10~15話目まで

ここで主人公、佐多に暴露するの巻。

佐多の反応は、わりと普通だと思います。この世界の常識人として主人公と差を見せつけるにはいいと思います。

こんな秘密を話すっていうのはひどいという反応も頷けます。そのわりにヒロインに会おうとしないので関わらないのか、と肩透かしをくらいました。あれだけ非難しても面白いことがあれば聞きたいというのも、準レギュラーくらいかと思えば、違うのか? というので、せっかくの危機感があったと思えば、面白がるところもあって危機感として薄いてのばいなかと思います。

13話目「喧嘩にも似たような言い合いをした二人は」→一人称に戻っているはずなのに、三人称となっています

そして、ここでまた14話目で視線が変わります。危機感を出すために転生庁のパートで出てきます。シリアスなところがあって非常によいと思いますが、あえてここで主人公たちのパートから、こちらを差し込むことでの読み手への視線の切り替えによる苦痛、話としての進みのテンポが遅くなってしまうこともあるかと思います。 

■16~21話目

16話目は唐突にインタビューとそのあと特別な転生庁の人物について、そして現時点で主人公たちとの合流パートです。インタビューのところとかその人物を特別に扱っているというのでわかりやすいですが、視線の変更からのこちらの出だしなのでやや読み手は置き去りにされた気分となります。

ここでの戦闘シーン、非常に白熱していると思いますが、やや理解しづらいところがありました。
理由は一人称・三人称がまじりすぎている、という点があると思います。

あともう少し行動・風景の描写が欲しいところです。

個人的にキャラクターの容姿がやや描写が足りていないと思いました。ここで出会った再転生者についても「翼のある化け物ぽいもの」と思っていたのでモンスターぽいのか、男なのか女なのかもイメージがまとまらなかったです。

転生庁のシリアスシーンなど含めて、ここではかっこいいし、活躍しているというので好感が持てます。
20話目~21話目のヒロインの受けるショック(助けられなかったこと)とそれでも諦めない強さ(私は化け物なのかな?と問いかけるシーンは非常にぐっときます。このばたばたの戦闘シーンがあってこその哀愁の漂いはすごくいいです)

なので非常に絵として見せることは出来ていると思います。これはいい武器なので、その点は大切にしてほしいと思います。

 

■総合感想として

設定などは魅力的であるし、ちょっとずつ作品に違和感をいれていくことで読み手を引きつけることには成功していると思います。

文章についても軟らかさがあるので、読みやすいです。

21話目までの区切りとしてヒロインの失望から希望をきっちりと書いてあるところなど非常に絵としていいものがありました。

その文、作品に頻繁に一人称・三人称を変えることで読み手を混乱させてしまうところ、転生庁の活躍が書かれているため、主人公がかなり置いていかれてしまうところが多く見受けられてしまいせっかくの一人称なのにお話の外側みたいな立ち位置(一般人としてヒロインを支える立場である重要性はありますが、もう少し絡んでいきたいところですね)になってしまっている点が非常に残念な点です。

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コメント

1. 無題

壱足壱葉弐です。
大変詳しい批評ありがとうございました。

一人称、三人称の件はweb小説に毒されてしまってたのかもしれません。
話数が変われば変更が許されると思っていた節がありました(そのような作品をたくさん見すぎた)。
やはり今話題の三人称一元視点、というのが一番良いんですかね。今更ですけど。
設定の多さについては実際頭を悩ませていたところです。
なんだかよく分からないけど体調が悪い、程度が丁度良かったのかもしれません。後半、なぜ体調が悪かったのか分かってくる、みたいな。

転生庁側のキャラの立たせ方、というのは難しいですね。あちらを描写するのに、主人公の一人称を用いるわけにはいきませんし、かといって全く描写しない、というのも気が引けます。
ただ、遺影のシーンなど、書きたいシーンを優先して話のテンポを削いでしまっていた、というのは事実ですね。構成を見直してみます。

大変ありがとうございました。

2. ありがとうございます

わざわざこちらにお返事、ありがとうございました。

■作品の一人称・三人称について
私はネット小説はちょっと読む程度なので、いっぱい読んでいる壱足壱葉弐様のほうが詳しいのだと思います。あくまで、これは私個人の感覚もあるので、読みやすいと思われる形で連載していけばいいと思います。
ただ上にも書きましたが「どうしてその形で書くのか」というのは頭にいれて作品を作ることでより、読み手に沿うものが出来ると思います。

■転生庁のシーン
とてもかっこいいシーンだと思いますが、エピソードをいれるところなどを少し変えるともっと効果的にキャラクターのカッコよさを読み手に伝えられるかと思います。

とても大切に作られていると思います。
連載大変だと思いますが、どうぞ、おがんばりくださいませ

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